詩・モード Z a m b o a volume . 2 |
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怖い場所 木村信子 水飴状になって流れてゆくと むこうから弟がなきなきくるので そんなおとなのなりをしてなんで泣いている と ひっぱたこうとしたけれど 手がないのでもがいていると 弟のからだにくっついてしまった ねぇちゃんはいつもそうやって おれをいじめてばかりいる じぶんばっかりこんなあまいみつになって と 弟はますますなくので しかたなし あれこれだましながら こどものころの話などしているうちに 弟はうとうとねてしまったので わたしもひとやすみしていると きれいな女のひとがきて 弟を起こしてつれていった あんなやさしげなひとがいっしょなら もう心配いらないとおもい すうすう流れてゆきながら
おもいだしたのだ わたしがこれから行かなければならない 怖い場所を
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二〇〇〇年二月一二日の
箪笥の抽斗の中で赤ん坊が死んでしまった (血は少量出ていた) 何度考えても本当のことだつた 僕の母親の所為なのだが 匿しぬこうと思えば出来るのだが 最終的に僕は出頭することにした 階段を降りようとすると足許に透明の ビニル袋が落ちているのが気に留まった 何度目覚めても本当のことだった 建国記念日の箪笥にひそむ嬰児の死 ●site メールマガジン「週刊電藝」2001年8月6日号掲載 |
" Tokyo night wave " そう名の付いた、これから創刊予定であるという詩のメールマガジンを、 僕はそのころ精神的に参っていて、 どうして玉村啓が、 |
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「指輪」 今日 僕は指輪を買った 別に誰にあげるともなく買った かわいくて素敵なものだったからだ 裏を見るとムーンストーンと書いてあった
最近夢で 受けた優しさのことばかり想い浮かべる とても優しかったんだ そして想い出しては後悔してる 優しい包まれるような笑顔で僕を見る いつも僕を見て笑う いつも ふいなことばかりで 僕はびっくりし 泣が出るほど楽しかった いつも 待ち合わせの時には会えなくて会えて 待ちすぎた分だけ 幸せはうれしかった
どうしてあきらめなかったんだろう あきらめられないことを あきらめないということほど 辛いことはなかった
今は いろんなことをあきらめた 夢を持ったけれど結局 あの時と同じ それは自分からというわけじゃなく だめだったから 仕方がなかったんだって
どうしてあきらめられなかったんだろう 努力なんかするより あきらめる勇気が欲しかった
昨日 僕は指輪を買ってから それをずっと眺めている その指輪をポケットに入れて
朝御飯を食べて僕は昼前の 人のいない電車に乗った 顔に 陽射しの揺れを 昔 小さい僕が経験したように 繰り返し 強く浴びている
ちょっと僕はポケットから指輪を取り出して 片目をつぶって窓の光にかざした
指輪のムーンストーンに暖かい光が反射した 僕は目をつぶった スコールのようだった
それからちょっと経ち 窓を突き抜けた光にある 外の流れる雲を見た それはとても自然なことに思えた
いつか僕はきっと
はっきりと伝えること----- そして、変われるよ、なんか なんて言えるのだろうか
がんばれ がんばれって 新しい明日に変われるようになろう
そしてその指輪を僕は もう あきらめよう
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