詩・モード Z a m b o a volume . 10 |
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□□□□illustration : : ni-na |
● カオリンタウミ特集 text●木村ユウ |
楽吉 月がまんまるというわけでもないのに 真夜中のキッチンで 君と僕は向かい合ったままじっとしている テーブルランプ 時計の音 ゆるんでる影 トム・ウェイツ 静止した状態の中でさえ 素粒子の動きは騒がしい 理想を高くもちすぎて 才能をもてあそんでばかりいる二人 たっぷりと溜めをきかせて「これってバッド?」 そして終らないクスクス笑いが始まる「グッドだ」 最近ようやくわかったことがある 正直に語るためには信頼関係が必要だ 心はどんな物質でできているのか 君がいて 僕がいて いっしょにいる それは何故かと誰かに問われたら 教えない 二人の秘密だ アートにいたずらをしかけて 才能をもてあそんでばかりいる二人 いつも楽しいので当然お金はない この世界は不気味で落ちつきがない 命の値段は変動するし 未来はほとんど決まっているようにも見えるが 本当のところは誰にもわからない 縁側でお茶をすするのはどんな気分だろう そのとき何を思うだろうか 21世紀にはリュウチシュウのようになっていきたい でもオズだけがリュウチシュウじゃないよねと 二人ともまったく同時に同じことを考える そして色がゴダールのようならいいなと思った Kaorintaumi = MUDDY " stone" AXEL |
□□BOYS ぼくは図書館のロビーでうとうとしている 寝ぼけた頭で幼稚なことを考えている 言葉がどっかから降ってきて 人を救うなんてことがあるだろうか? ふと気がつくとぼくのとなりに 絵本の表紙をじっと見つめ ため息ひとつついてる子供がひとり ねえ、きみのよろこびは何だい? はっと顔をあげぱっと笑う子供 茶色い小さい靴をはいている ねえ、話してみてくれないか きみのよろこびは何だい? ・・・ピース、ピースだよ そして走っていってしまった 小さな靴音と印象的な笑顔を残して きっと古い写真の中ではぼくだってそんな顔をしていたはずなのに いったいどこへ行ってしまったんだ すんだ瞳を色褪せた写真の中に残して 遠くの柱の陰から顔を覗かせて 誰かがぼくを呼んでいる さっきの子供だ ねえねえ ここにいるよ そうかい そうだよな ここにいるんだよな 思えば遠く来たもんだなんて めそめそしている時じゃないんだ 世界は危険に満ちているから 夢見ごごちは価値ある気持ちだ だからぼくは こんなふうに 図書館のロビーでうとうとしているんだ ぼくはもう一度その子を隣に呼び寄せる ねえ こっちへおいでよ ぼくのことをはなしてあげるよ ぼくはたしかにすごく遠いところから来たんだ 何をしに来たか知ってるかい? きみと同じだよ そう 君と同じさ 怪獣ブースカを探しに来たんだ! |
ぼくは図書館のロビーでうとうとしている 寝ぼけた頭で幼稚なことを考えている 言葉がどっかから降ってきて 人を救うなんてことがあるだろうか? ふと気がつくとぼくのとなりに 絵本の表紙をじっと見つめ ため息ひとつついてる子供がひとり ねえ、きみのよろこびは何だい? はっと顔をあげぱっと笑う子供 茶色い小さい靴をはいている ねえ、話してみてくれないか きみのよろこびは何だい? ・・・ピース、ピースだよ そして走っていってしまった 小さな靴音と印象的な笑顔を残して きっと古い写真の中ではぼくだってそんな顔をしていたはずなのに いったいどこへ行ってしまったんだ すんだ瞳を色褪せた写真の中に残して 遠くの柱の陰から顔を覗かせて 誰かがぼくを呼んでいる さっきの子供だ ねえねえ ここにいるよ そうかい そうだよな ここにいるんだよな 思えば遠く来たもんだなんて めそめそしている時じゃないんだ 世界は危険に満ちているから 夢見ごごちは価値ある気持ちだ だからぼくは こんなふうに 図書館のロビーでうとうとしているんだ ぼくはもう一度その子を隣に呼び寄せる ねえ こっちへおいでよ ぼくのことをはなしてあげるよ ぼくはたしかにすごく遠いところから来たんだ 何をしに来たか知ってるかい? きみと同じだよ そう 君と同じさ 快獣ブースカを探しに来たんだ! Kaorintaumi = MUDDY " stone" AXEL |
JUST LIKE A DRUM ドラムスコ ドラムのようにドラムスコ かけずりまわって足バタバタ ドラムのようにドラムスコ かけずりまわって足バタバタ 小さな波動 ひろがる波紋 心の周波数 超音波の領域では 鳥たちも 空高く踊る あ!おやじの自慢のおんぼろHi-Fiから流れてるのは 力強い反逆の唄! 意味よりも先に 魂をひっ掴むもの 自然のメロディー 原始のリズム ドラムのようにドラムスコ 目はキラキラで 口からは野生のさけび かけずりまわって足バタバタ 思い余ってくるくる回り始めやがった 目が回るまで くるくる回る ドラムのようにドラムスコ・ロールだ! 母親が優しい笑顔で見守っている □□□「ああ、わたしのドラムスコ、おまえがまだわたしのお腹の中にいた頃、 □□□□よくマヘリア・ジャクソンの唄を聞いたものだよ。その度におまえは □□□□そのゴスペルのリズムに合わせて小さな足でわたしのお腹を蹴ってい □□□□たんだよ。覚えてる?思えばその頃からおまえはドラムのようなドラ □□□□ムスコだったんだね…」 そうなんです 誰だって小さな子供だったときがあるんです そして小さな子供が体をばたばたさせてるその姿は まるで動く芸術のように美しく、しかもどっか滑稽で笑っちゃいますね… 人間なんてもともとはそんな生き物なのかもしれません だから どんな大人だって心の中にドラムのようなドラムスコがいるのかも… 優等生の心の中にいるドラムスコは やっぱり窮屈な毎日を送っているのでしょうか ちょっと心配だ! そして ついに今 優等生の20世紀が終わろうとしている 音をたてて崩れようとしている それでも あら 時代の崩れ落ちるその音に合わせて 踊ってる奴がいるではないか! やけに楽しそうに なんか元気いっぱいに ドラムのようにドラムスコ 目はキラキラで 口からは 未来の祈り かけずりまわって足バタバタ 両手広げ くるくる回ってやがる 目が回るまで くるくる回る ドラムのようにドラムスコ・ロールだ! □□□ああ、我らが命よ!ドラムスコとともにあれ! □□□ああ、ドラムスコ!我らの常識を切り刻んで リミックスしてくれ! □□□おまえの新しいリズムで 思いきり楽しませてくれ! □□□そしていつか大人になっても □□□おまえのオリジナルなリズムだけは 忘れずにいてくれ □□□ドラムのようにド・ラ・ム・ス・コ! Kaorintaumi = MUDDY " stone" AXEL |
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OUT OF SIGHT | だらりといく□悲しみをはねかえすために □□□□□□□ふざけたまねして□だらりといく □心の中では□全てがうまくいくように願いながら □□□□□□□ふざけたまねして□だらりといく ダリアの花が□だらりと降り注ぐシーツの上で... ダリアの花が□だらりと降り注ぐシーツの上で□テンポおさえ □□□□□□□余韻を引きずりながら□ゆっくりと燃えている 見えないものん中にひそんでいる□風は頭の中で受け止める… □□□□□□□□□□□□□□□□風は頭の中で受け止める 「何も信じなくていい□何も頼らなくていい おまえのかけた迷惑のせいで誰が困るのかを知ればいい」 □□□□□□□その声は…いったい誰ですか? □□□□□□答えはなく□振り向けば風が吹いている □□□□□□□□□□□□見えないものん中にひそんでいる 風は頭の中で受け止める□悲しみをすり抜けてゆく… □□□□□□□□□□□□悲しみをすり抜けてゆく □□□□□□□□□□□□光の粒子を確かに見た気がした□嘘でもいい 生きていてもいいんだよと言っているような□物凄い景色を眺めていたい □□□太陽はまだよく見たことはないけれど□月ならよく見ていた □□□□□満月が木の後ろに落ちていくのを□ひたすら見つめていた □□□□□時間の感覚が完全に麻痺した瞬間 □小さな風のさやけさに完全に同調した瞬間 □□□□□□□□□□□□悲しみをすり抜けてゆく □□□□□□□□□□□□光の粒子を確かに見た気がした□嘘でもいい □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□嘘でもいい 生きていてもいいんだよと言っているような□物凄い景色を眺めていたい Kaorintaumi = MUDDY " stone" AXEL |
RAMBLING IN THE RAIN 人のやる気を奪う空の下 容赦なく雨が降ってやがる 俺はまったくずぶ濡れで 雨宿りの場所をさがしてんのさ ちょっと前なら 1ミリの隙もない管理と退屈でがんじがらめな毎日 一転して最近は 容赦なく弱いものに死を宣告する暴挙がまかり通るときた 結局 飼いならされようが見捨てられようが どっちにしろ 約束された未来なんて初めっからないんだ 俺は雨宿りの場所をさがしてんのさ 雨がこれ以上激しくなる前に安全な場所に隠れたいんだ ばかでかい広告宣伝板は未だに何かを買え買えってうるさいぜ 街のBGMは無責任なことばっか言ってうるさいぜ 安っぽい楽観論や「ポジティブです」ってやつがうるさいぜ およそおめでたい嘘っぱちにはファックオフって言ってやるんだ 俺達をうんざりさせるマス・プロダクションは こんな時代になっているっていうのに いまだに何もなかった振りをして闇雲に突っ走れって言いやがる 一つの神話やら歴史ってやつが終わったってことを知らないのか? それとも 一つの神話やら歴史ってやつが終わったからって 現実の時間や生活は続くってことを知らないのか? 俺は雨宿りの場所をさがしてんのさ 雨がこれ以上激しくなる前に安全な場所に隠れたいんだ そこでもう一度 びしょびしょの服を乾かせたら俺だって ちょっとは明るい話だってできるのに… 明日晴れたら大笑いさ ちょっと風邪ひいたぐらいで済むんならOKさ とにかく! 詩人が病んでる時はその国も病んでいるんだ これからはどんどん金持ちしか病院に行けなくなるらしいんだぜ そんなことがどんどん増えて そのうちみんながブルースを歌い出すんだ そうやって まるで絶望的な環境から素晴らしい音楽が生まれるように そして 素晴らしい音楽ががっちりとネットワークを作って何かを伝承していくように 犠牲になる事をかたくなに拒絶するための道具として あのプリクストンの反抗的なレゲエ・ソングのように強烈な言葉を頼りに 俺は雨宿りの場所をさがしてんのさ 雨がこれ以上激しくなる前に安全な場所に隠れたいんだ そこでもう一度 びしょびしょの服を乾かせたら俺だって 複雑な仕組みやいわれない伝統やうざったい美学なんかに惑わされないで 夜明け前の空にささやかな星を光らせることだってできるかもしれないんだ 明日晴れたら大笑いさ 太陽の下で大の字んなって寝るのさ でも今は まだそんな未来はお預けさ とりあえず 俺は雨宿りの場所をさがしてんのさ Kaorintaumi = MUDDY " stone" AXEL |
楽吉のタイプライター しとしと雨の夜 オーノー! まるで飛べない天使たちの飛行場だぜ オーノー! テレビに移ってるのはパラダイスよりも奇妙なウエスト・コースト オーノー! 俺の机の上には フリーマーケットで君が買ってくれたオリベッティーのタイプライター!オーイェー! たった200円で売ってたんだ いかしてるぜ オーイェー! でもどーやってリボン交換するのか… ちょっと不安だぜイェー! とにかくこれこそ金じゃ買えない幸せってやつだイェー!イェー!イェー! ベイビー!幸せだぜ! ベイビー!俺は最近思うんだ もしも ボニーとクライドがうまいこと逃げ切って どっかでかたぎんなって生きていたら どんな人生を送ったかなぁって? やっぱり子供を生んだんじゃないかなぁ… そんで 庭で遊んでる可愛いジュニアを部屋の窓から眺めて 結局幸せは金じゃ買えないってことがわかったよ なんて二人で語り合ったかもなって 俺たちに明日はない なんて明日のことを考える余裕もない俺が言うのもなんだけど 俺は今 明日にむかってうて!ってゆー気分なのさ なにをうつのか?って そりゃもちろんこの200円のタイプライターさ 未来をこの手に掴むためにさ!文筆活動にはげむのさ! なんたってオリベッティーなんだぜ!イェー! 今日から俺は自分の詩は全部ローマ字で書いたっていいと思ってるくらいなんだ! ベイビー!わかってくれるか?それくらい嬉しいんだよ いっそのこと本気で英語勉強して海外で活動するか そしたらほんとにタイプライターで詩書けるもんな そんなにうまくいくわけないなんて 言わせたいやつには言わせておけばいいさ 俺はただ 今っていうこの時にしか感じられないものを思いっきり感じていたいだけなんだ オーベイビー!わかってくれるか? ほしかったものは必ず自分のところにやってくるんだ! オーベイビー!なんてこった!今わかったぜ! タイプライターのことなんてもちださなくたって 今 俺の横には君がいるんだ! オーイェー! 青い鳥を探しに行くっておとぎ話の意味がやっとわかったぜ! そんじゃしとしと雨の夜があけたら 改めて 俺たちの宝物を探しに行こうぜ Kaorintaumi = MUDDY " stone" AXEL |
REDEMPTION SONGS 1999 Korinsha Press All texts copyright 1999 MUDDY"stone"AXEL Special thanks to Kawaguchi Takeshi and "incosan" "saikisan" "maedasan" "satousan" "abesan" and "kaorisan" DEDICATED TO RINTAROU |
薄明るくなだらかに 空はあたたまりはじめている 必ず目を開けていられるようにしたい その時を見逃さないように 今から3秒後 瞳のおもてを晴れ間が滑ってゆく まぶしさに目を細める ぬかるみの上を歩くときの 跳ねあがる泥のあたたかさ なつかしさ さぁ ここまでいらっしゃい と 伸ばした腕をやさしくとって 引き上げてもらう、まぼろしを見る うながす声が届くと 胸の内でかたく冷えていた 結び目は 不意にゆっくりとほどける 音もなくゆるんで… いいえ ほんとうは少しだけ 小さな音がする それはまるで 注意深く押し出すためいきのような そのまままぶたに指をのせて ゆっくり力をこめてもらうと せわしない震えは引いていく とてもありきたりだけれど 魔法のようだ 夕暮れのふちで目を開けると 何の夢を見ていたのかは 思い出せないのに 頬はべとべとに濡れて しかも凍えている 触れて 探ってみて ようやくそれに気づく 隠さずに言うなら きのうもおとといもその前の日も あなたが すぐそこに来ていたことを知っていた 何度も戸をを叩き 揺さぶって だけど 名を呼ばれたら そのときわたしは軋んで割れる だから息を詰めて 隅の暗がりに潜み 抱えた膝を放すことができない 壁は背に触れて こうしている間も きりきりと冷たい 冷たいまま眠れば 目覚めるときにはもっと冷たくなり ちいさくうずくまったまま やがて温度のない露になり どこへも溶けてはゆけなくなるのだから 一歩進めば夜へと転げ落ちていく その手前で わたしは 遠くへと誰かを むせび呼んだあとのような 激しいめまいにとらわれている 今も |