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八木重吉

 

 


(なぜわたしは)
(なんというわからぬやつらだろう)
(みずからをすてて)

(むなしいことばをいうな)
(金がないのだから)
(ゆうぐれの陽のなかを)
愛の家
 
 
 ○     八木重吉
 
 
なんというわからぬやつらだろう
にんげんはそんな家はいらないんだ
そんなてかてかとむやみにおおきい
歯のうくような住宅なんかよせばいいに
この世の中から活動写真と芝居と
写真道楽と別荘をなくしてしまえ
人間のすむ家は
だれもかれも二十円ぐらいの家賃のものにするがいい
そして野と山を荒してはいけない
野と山がこれ以上せばまってゆくなら
日本はいきがいのない国になってしまう
みんないちばんいいものをさがそう
そしてねうちのないものにあくせくしない工夫をしよう
人間一人の生命のためにも
人間すべての生きがいのためにも
なくてよいものをあえぎもとめるのは
なんというおろかしいことであろうか
 
 
 
 

●ルビ
工夫(くふう)

 
 
 
 

底本:日本の詩 第17巻 八木重吉集 田中清光編 集英社刊

 

 
 
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