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八木重吉

 

 


(なぜわたしは)
(なんというわからぬやつらだろう)

(みずからをすてて)
(むなしいことばをいうな)
(金がないのだから)
(ゆうぐれの陽のなかを)
愛の家
 
 
 ○     八木重吉
 
 
なぜわたしは
民衆をうたわないか
わたしのおやじは百姓である
わたしは百姓のせがれである
白い手をしてかるがるしく
民衆をうたうことの冒涜をつよくかんずる
神をうたうがごとく
民衆をうたいうる日がきたなら
その日こそ
ひざまずいてれいかんにみちびかれてものを書こう
 
 
 
 

●ルビ
冒涜(ぼうとく) 「涜」は旧字体

 
 
 
 

底本:日本の詩 第17巻 八木重吉集 田中清光編 集英社刊

 

 
 
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