トップ入口 

 
 
高村光太郎

 

 
道程
母をおもふ
孤独が何で珍らしい
晩餐
あどけない話
レモン哀歌
荒涼たる帰宅
梅酒
案内
あの頃

報告
 
 
案内   高村光太郎
 
 
三畳あれば寝られますね。
これが水屋。
これが井戸。
山の水は山の空気のやうに美味。
あの畑が三畝、
いまはキヤベツの全盛です。
ここの疎林がヤツカの並木で、
小屋のまはりは栗と松。
坂を登るとここが見晴し、
展望二十里南にひらけて
左が北上山系、
右が奥羽国境山脈、
まん中の平野を北上川が縦に流れて、
あの霞んでゐる突きあたりの辺が
金華山沖といふことでせう。
智恵さん気に入りましたか、好きですか。
うしろの山つづきが毒が森。
そこにはカモシカも来るし熊も出ます。
智恵さん斯ういふところ好きでせう。

 
 
 
 

底本:日本の詩 第5巻 高村光太郎集 伊藤信吉編 集英社刊

 

 
 
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