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宮沢賢治

 

 
永訣の朝
札幌市
青森挽歌
林中乱思
眼にて云ふ

雨ニモマケズ

雨が霙に変ってくると
 
 
夜   宮沢賢治
 
 
これで二時間
咽喉からの血はとまらない
おもてはもう人もあるかず
樹などしづかに息してめぐむ春の夜
こゝこそ春の道場で
菩薩は億の身をも棄て
諸仏はこゝに涅槃し住し給ふ故
こんやもうこゝで誰にも見られず
ひとり死んでもいゝのだと
いくたびさうも考をきめ
自分で自分に教へながら
またなまぬるく
あたらしい血が湧くたび
なほほのじろくわたくしはおびえる
 
 
 
 

●ルビ
涅槃(ねはん)

 
 
 
 

底本:日本の詩 第10巻 宮澤賢治集 天澤退二郎編 集英社刊

 

  
 
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