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 セコンド(選外佳作)vol.31  Send us your poetic heart.

 






母に
大覚アキラ SITE



おッ母さん
久しぶりに夜更けに実家に帰って
ダイニングテーブルでうたた寝してる
アンタの背中を見ていたら
おッ母さん
なんだかもうアンタは
死んじまってるんじゃないかって
そんな気がして
おッ母さん
いつの間にアンタ
そんなに小さくなっちまったんだ
見ているうちに怖くなって
おッ母さん
って呼びかけてみたら
あくびなんかしてやがるから
おかしくって涙が出た





河野龍彦  SITE 
 
皆が一度は経験、実感を体験することを
書けるということは、簡単なようで、本当は非凡な
感性ということだ。/おッ母さん/ という言葉でなかったら
次点にしてただろう。








星のうまれるところ
汐見ハル SITE



ふりつもる夜の殻が
ふみしめるたび
かわいた音を立てて
砕ける
名前を思い出せない花の香りが
密度を増した湿度となって呼吸を
奪う
夜の果てにたどりつく
手っ取り早い方法は
眠りなのに
はがしてもその向こうに
幾重にもかさなる
うすい花びらに包まれている
そんなふうに
夜の果てをさがしあぐねて
もう眠りつづけることが
できなくなってしまって
あてどなくあるく
 
いつまでも明けない夜の底で
ふと
しろくひかる、小石
蛍のようにあわくにじむひかり
てのひらにすくえば
こぼれおちる
ドライ・フレークス
わたしの、闇
のこされた小石を
ほんとうには
さがしていたものではないと
知りながら
のみこめばのどの奥が
ちりりと痛み
いまさらながらに気づく
そういえばここは闇だった、と
 
そしてふいに
遠く
誰か、でしかない
誰か
そのひとの頭上、はるかかなたに
星はきらめいていた
ひとつきり
それはわたしの頭上でもあった
 
ただ ただ
星ばかりみあげて
腕を
ゆびを
のばして
とどかず
 
それでも
ただ ただ
星だけをみつめて
 
からだの真芯に
灯りつづけるひかりに
気づけないでいるひと
やわらかく、しずかに
あふれだす
涙、みたいな
 
目を凝らすと
ひかりの中心に
たぶん水晶なのだろう
すみついて、根を生やし
とがった
つるぎのかたちの結晶が
幾本も
星のかたちにのびてゆく
ゆっくりと
やわらかい内臓に
くいこみながら
 
風がとおる
名前のわからない花の香りが
からみついた皮膚に
ほどけて
 
苦痛に顔をゆがめ
それでもなお
届かない星に手をかざす
そのひとの
抱える星を
みつめつづける
声は出なかった
のどのおく
いちばんふかいところから
ちりちりと痛みはやってきて
わたしに教える
 
わたしの真芯にも
やはり
水晶が灯り
やわらかく
この身を食い破ってゆく
 
眠ることもかなわず
歩くことも忘れて
ただ みとれている
届かないことを知ってのばす腕は
つるぎのかたちにあわく
にじむひかりだ
 
星をみつめつづける
のぞむままに
夜は 終わらないだろう





河野龍彦  SITE 
 
二連の展開に強烈なインパクトを受けた。/しろくひかる、小石/
/蛍のようにあわくにじむひかり/ この二箇所からの展開が入選の
決め手となった。また、言葉を創る努力が見受けられたのも合わせて。








【次点及び統括的感想】 
 
次点は、今回投稿者全員に挙げたい。みなさん、よく頑張ったと感謝している。
技術的にも、もちろん感性の捉え方にしても。0417さんの「森林」は、後半を
ばっさりと削除していたら入選していただろう。ネットから紙の媒体へと移行の
努力をしている段階なのだが、縦書きを頭にいれて詩作して貰いたい。 
河野龍彦
 
 
 
※重要なお知らせ
木村ユウです。紙での創刊が大変遅れています。
Zamboaでの投稿受付を一時中断し、
投稿受付・河野龍彦のアドバイスレビューを
ポエトリージャパンのメルマガ「ドルチェ」に移行します。
詳細発表と募集はドルチェで行いますので、
あらかじめ購読をしておいて下さい。
なお、現在投稿頂いている投稿作品に佳作がありませんでしたので、
今回をもって受付・更新を中止いたします。
よろしくお願いいたします。





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