ザンボア
詩・モード  Z a m b o a  volume . 22
 
  
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 photograph : : ni-na
 
   
 
 
 
 
 
 

「愛について」北川浩二
 
 
 
むかいあって
みつめあうわけではないけれど
とても大切に思っているよ
全然関係のないところで
きみの顔が浮かんではなれない
ほとんど突然に 浮かんで頭からはなれない
もしも伝えられるなら
その瞬間を伝えたい
いますぐに
むかいあって
 
みつめあいはしないけれど
とても大切に思っているよ
遠く離れていても
近いというのは 本当のことだよ






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「希望」北川浩二
 
 
 
短い命のようである
淡い色の光をぼくは持っていた
それはいかにも頼りなげにみえた
消えても不思議はない
しかしそれがぼくの希望の光になっていった
消えても不思議のないものが
何をされても消えずに
むしろぼくを暖める
いつ消えても不思議はない
それは涙の出るほどぼくに近かった
 
これがぼくの人生だ
これが
ぼくの一つしかない人生なのだ
くじける心も支えられ
生きる 沈み苦しむ
心は照らされてようやく立てる






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 photograph : : ni-na
   
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「歌」北川浩二
 
 
 
ひとりきりで
いつまでも黙っているような歌を
もしもうたえるのならどんなにいいだろう
特別うたおうとしなくても
そこにいるだけで
うたっている自分であったなら
この胸がひとつの楽器で
悲しみや苦しみにふれるたび
痛切に
切られるように響いたならどんなにいいだろう
 
いつまでも
いつまでも黙っているような
静かでやさしい歌がこの世にあるのならどんなにいいだろう
だれかのそばで
だれかのために
自分にできることを探しても他にみつからずに
ただもう夢の中でもがくようだったならどんなにいいだろう






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「奇跡」北川浩二
 
 
 
ありふれていたとしても ぼくは奇跡だと思っている
生きていることを
ぼくは奇跡だと思っている
そのように思えば なんでもできるという気がする
自分の意気地のなさが
身にしみてわかっているはずのぼくでさえ
なんでもできる と思っては
力の湧いてくるのを待っている
 
どんなにみっともないものでもよい
どんなに小さなものでもよい
自分の願った通りに
力が湧いてきたときはただただうれしかった






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 photograph : : ni-na
   
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「夜」北川浩二
 
 
 
夜はだれのところへも来て
もう戻れないことを知らせる
時は流れている
二度と引きかえすことはできないと
 
ここにいるということも
実はそんなに長くないこと
百年は一瞬だから
息をとめて その次はき出す
それだけの長さ短さ
 
行きつ帰りつ
せわしなく動きながら ぼくは
ぼくに教えさとしてくれる
輝きをきっと待つ
死ぬことくらいで
人生がかわったりしないようにと
 
今夜ぼくは生きていることが不思議だ
どんなにいつものことでも
生きているということは
不思議で ひとりきりになってしまう






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北川浩二    
MIDNIGHT INTENTION TO THE PILOT BOAT
"パイロットボートの深夜行" 2003 Poetry Japan
All texts copyright 2003 Koji KITAGAWA
Special thanks to Ayane HAYAKAWA, Wara SOGAME, Eisuke SAWADA, Non MIYASAKI
 
 
 
 
 

 photograph : : ni-na

 
 

 

 
 
 
 
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   2003.12.1 偶数月1日発行