華代子は覚えている?―――
どこまで転がり落ちてゆくのか底すらも見えない日々の中で、”いつなにがあってもおかしくないことを、ここはそういう世界であることを学んだ”ひとりの少年。
そこに差し伸べられた、光明のような華代子の白いてのひら。自分を慈しんでくれる美しいひと。はじめて知る魂の平安。だが突然に「その日」はやって来た…。 ――人はなぜ不幸に絡めとられてしまうのか―― 大人になっても彼をさいなむ思い。坂道の上にあった白い家での僅か一年の記憶は、そんな彼を支え続け、そして光の方向へとそっと背中を押す…。
木村ユウが曽根亘元名で出す、集大成的詩集。
「さかみち 第一部」収録。
出版にあたり大幅に加筆・修正を行い、また、書き下ろし作品も含む全三十五篇。
収録作品
国道/焼かれたパン/
光が射していく順番、リスト/話をしてくれ/
ジャック・マイヨール、草の中の足/
ホテルシナモンズで/臘梅/焔の中で/
屋外市/カラーズ/
ばら色の砂/木蓮/
気配/水のない東カナルには/
蜜の流れ/
クールズ(足)/
コーラル/エイプリィル・デイズ/
六月、カフェ/マティニ/
その夜食べられるキャベツの枚数を/
テラス、その水の匂い/
パンジー/けし/月光/
パラフィン、冷たい水蒸気/洋梨の味/
影/歌/
銀色向こう側/炎の環/
耳を満たす海水の青、白ワイン/
髪/坂道/
珊瑚/