船大工の想い   多田龍介
 
 
この民族には自分たちで船を作る力がない
 
「俺が来たからには安心して泥船に乗った気でいろ」
という船長は明らかに酔いどれで
 
昔乗っていた船はそりゃひどかった
そのあと手に入れた船はそりゃよくできていて
僕らの父母はそれで七つの海を股に掛けたりもしたそうな
 
ところが今
その船でも乗り切れない嵐が
 
船長は人力で漕いで船を進めよという
ガレー船か何かと勘違いしているのだ
このノウハウは
昔乗っていたボロ船の負の遺産である
 
船大工はこの人たちに船を作ってあげたい
 
ノアの箱舟は大きいけれど
あれは何より大災害を見越しての船だった
そうではなくて
 
今乗っている船をジーベック級だとすると
やはりスクーナーかクリッパーのような
風を帆にはらみ 荒波の上をすべるように進む
物も人もたくさん積めて 遠洋を望める冒険船を
 
いい船に乗れさえすれば
この人たちはきっと目を見張るような力を見せてくれる
かつてそうであったように
 
 詩は
 嵐の海を渡る船にとって
 灯台の役割くらいを果たせればいい

 
 
 

 

 
 


 

 

 

 
朝四時の短詩
 
●著者 多田龍介
●出版社 ポエトリージャパン
●ISBN 978-4-9906783-1-9
●価格 1,000円(税込)
●サイズ 四六判
●113P
●2017年9月7日 発行
●在庫数 あと3冊

 
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●内容
多田龍介さん約10年ぶりの新刊。40篇の詩に著者撮影の写真を挟み込んだ。痛み、ユーモア、物語、孤独な魂、10年の軌跡。

 

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