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いろえんぴつ なかむらてつや
いろえんぴつをみせて
愛想のいい店員に
値段をいわれて
まだおさなさの残る娘が
ちいさな口でキャンセルといっていた
手の中にあった
いろえんぴつは
一本ずつレジのうしろに
もどされていった
いろが
返されていくのを
あの娘は黙ってみつめていたけど
頬が紅潮していた
くらい空のしたを
あるくとき このごろふいにおもいだす
いろえんぴつは
体温を失ってから
だれかの手の中で
いまはいろをかがやかせているだろうか
あの娘のみていた
いろは
どんないろだったんだろう
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mocha(モカ)
●著者 なかむらてつや
●出版社 日本自由詩協会
●ISBN 978-4-9902343-6-2
●価格 500 円(税込)
●サイズ 148mm×97mm
●48P
●2008年5月31日 発行
●在庫数 あと2冊
●内容
モカは一通の便箋からはじまりました。喫茶店のいつもの椅子に座って、旅先からの友人の手紙を読んでいました。窓のそとの空と淡いクリーム色の手紙は喫茶店の明かりのしたで調和していて、コーヒー豆のようなおだやかな友人の目が浮かんできました。薄い便箋には旅先での小さなハプニングが愉しげに綴られていました。ふさぎがちな僕の心が友人のプロペラ飛行機に乗せられて救われていきました。この小さな詩集が未来の友人にあてて書いた手紙のようであったらと思っています。ポケットの中のチョコレートの包み紙のようにどこかにおいていただけたらと思っています。
なかむらてつや
ポエトリージャパン ペーパーバックス・スマートからの出版です。手のひらに乗る、いつまでも触っていたくなるような詩集。著者による表紙アートワークがかわいい。 |
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